10年前と比べて、変わったことと、変わってないこと。


約10年前の今頃、お金も気力も何もかも尽きて僕は働いていたカフェを辞めました。
生活費もない中、最後に手にした13万円はimacに変わり、盛り返そうと頑張り始めた丁度その頃でした。2月と3月だけそのimacを持って旅行代理店のお客さんのところへ常駐して、そこの仕事をやりながら、少しだけいたお客さんの仕事もこなしていました。
 
旅行代理店でもらえる月額のフィーはほとんど家賃などに消えるので、財布には全くお金が入っておらず、その2ヶ月間も身動きが取れる状態ではありませんでした。
先行きが見えなくても前に進まないといけないあの感覚は、本当になんとも言えない居心地の悪さで、でもそこの事務所で毎朝淹れてもらえるコーヒーの匂いが気分を落ち着かせるし、なんとなく僕たちがカフェで一発当てたかった想いに諦めを付けさせられているような感覚になりました。
 
現実はそんなに甘くない。どれだけ想っていても結果が伴わないと社会から弾き出されてしまう。僕はたまたまコーヒーを飲みながらこのブログを書いているけど、すっからかんになってリベンジすることはそんなに簡単ではなくて、運がよかっただけなんだと今でも思っています。
 
旅行代理店で淹れてもらっていたコーヒーは、名古屋の久屋大通にある「加藤珈琲店」さんの「5ドルコーヒー」という名前のコーヒーでした。曜日限定だったか、雨の日限定だったか忘れてしまいましたが、とにかく500gで5ドルとかそんな換算のお手頃なコーヒーで、僕にとっては気分が落ちつく味でした。
 
僕は普段、金属フィルターを使ってコーヒーを淹れることが多いのですが、この2月3月だけはなんとなく、ペーパーフィルターで淹れたあの味を思い出して、同じようにアトリエでもペーパーフィルターでコーヒーを淹れることが多いです。
 
さて、あれから10年以上も月日が過ぎていますが、旅行代理店さんとのお付き合いはまだ続いています。
基本的にお客さんの事務所にノートPCを持ちこみ、お客さんが横に付きながら「こうしてほしい、ああして欲しい」と言われ続けながら作業をする修行のような仕事で、徹夜は当たり前。12時間通しで「こうしてほしい、ああして欲しい」と言われて作業することもありました。
 
辛かったけど10年前の僕には選択権なんてなかった。何でも受けるしかなくて、そこからどうやって這い上がっていこうかを常に真剣に考えていました。あまりの辛さに辞めたいと言いに行ったこともありますが、作業がシンプルに大変で誰でもできる作業では無くなっていたので、引き留められてそのまま続いているという感じです。
 
幸いなことに今はスカイプとか、便利なツールがあるので、訪問せずに簡単な作業で終わるようになっていて、ストレスも限りなく少なくなって、本当にいい時代だなと感じています。
 

僕がこの10年で学んだことは、0を1にすることの難しさと楽しさ。
ただやるだけでは無くて、前に進むために新しいことにもチャレンジしながら、時代にフィットした価値を作っていくことの大切さ。
 
年齢はあまり関係なくて、どの世代でも新しい価値を作ってきた人や残っているし、知らない間に消えて行った人もたくさんいます。会社の規模や体制などでもやれることとやれないことがあって、すべての物事を自分の今までの枠に当てはめようとすると失敗してしまう。僕が働いていた飲食店は社長が完全なブラック体質で、今でも無茶苦茶だったと思っているけど、ないものは作ればいいという精神はすごく勉強になりました。
 
普通はこうじゃないのとか、こうあるべきとか、そういうものが一切通用しない場所や業界なんかもたくさんあって、そこではいちいち立ち止まっていると溺れ死んでしまう。
時代の流れが10年前よりもどんどん速くなっていて、無い枠を自分でつくるくらいの精神力がないと、これからはもっと大変になっていくのではないかと、自分自身真剣に悩んでこれからのことを考えています。
 
捨てる勇気、背負う勇気、積み上げる勇気。
 
就業しながら専門学校まで通って勉強した会計学は、僕が本当にやりたい仕事じゃないと思ってしまって、追求することをやめました。
10年前にカフェのメニューを撮影するために初めて触った一眼レフは、今よりずっと下手だったけど、良いものを撮りたいと撮り続けて今の僕を支えてくれるようになりました。
写真にも載っている13万円で買った白いimacをもし買ってなかったら、僕は今のような仕事をしてなかっただろうし、どんな生活をしていたんだろうかわかりません。でもマイナスから始まって自分でプラスにしていく過程は面白いし、せっかくの人生なんだから一回くらいは自分で「ゼロからイチ」を経験したいと思って今があります。
 
これから10年どんな生活が待っているのか分かりませんが、その10年先のさらに10年先まで考えて、前に進んで行きたいと思います。

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