10期目を終えて、11期目は新たな創業の年に

先日、税理士の西浦さんが決算の確定のためにわざわざ名古屋から松阪まで来てくれました。西浦さんには会社が始まる前に知り合ってからずっとお世話になっています。2011年に創業して昨日で10期の決算処理が終わりました。

会社を辞めるまえに取り合えず作った株式会社は何とか10年持ち堪えて、2022年1月より11期目に入りました。よく言われる会社が存続する期間の話で、会社が10年続く確率は6%ちょっとだそうです。16社のうち1社しか生き残れない狭き門をくぐれたことは正直嬉しいことです。デザイン事務所としてやっていくと決めてから振り返れば10年、世の中の仕組みも大きく変わり、私たちが行っている仕事の内容も大きく変わりました。振り返ると少しずつ確実に思っていた事が起きていて、これからもそういう未来を敏感に予想しながら、仕事のスタイルや内容を変えていくことが大切だなと感じています。

色々な手段を持つことがポジティブに捉えられるようになった

僕が独立した当時、デザインを行う人はデザインだけ、例えばデザイナーという肩書きがある人がカメラを持つことは「中途半端な人」というイメージがあって、実際にそういう仕事のスタイルはダメだと言われたこともありました。

VaundyとかWurtSとか、最近いいなと思って聞いていた若手のアーティストは、作詞や作曲から映像制作、アートワークなども一手に手がけてクオリティーの高い作品をどんどんリリースしています。誰かに習う前にやってしまうこと自体でオリジナリティーが生まれて、個性の強いクオリティが高い作品が生まれてくる世の中に変わりました。これは10年前では少し特殊なことだった気がしますが、最近は肩書きに囚われないプレイヤーが増えてきて、より「いいもの」を作るための手段は選ばないという時代に突入した気がします。

年末に取材に同行して撮影を担当した「d design travel」。僕の普段の肩書きはデザイナーですが、撮影の仕事も多くて、現場によって立ち位置が変わるということはもうすでに当たり前の光景です。

CSR(企業の社会的責任)という考え方がより浸透した

10年前は「お金に直結しないことをやる意味があるのか?」という話もよくテーマに上がり、終わりなき経済成長を目指すのが会社としての存在意義という考え方も多かった気がします。企業に勤めている時にCSRについて「それがどう会社にメリットがあるのか?」と言われてそもそもCSRのコンセプトはそういうことではないと伝えても、なかなか理解してもらえませんでした。「やる意義があるならやる」という考え方は独立当時「それは甘い」と先輩に言われていました。

経済成長と自分の会社の成長は別だと思っていて、僕自身、経済成長はとても大切なことだと思っています。僕たちは経済成長の恩恵で便利で快適な社会を手に入れています。最近は経済が成長すると温暖化や環境破壊につながるというロジックで語られてしまうこともあるのは悲しいけど、テクノロジーで課題が解決できることがあるし、何でも昔の生活に戻ることばかり考えるのではなくて、田舎でもテクノロジーを活かした持続可能な生活を考えたり、色々と前向きにチャレンジしたいなと思っています。

経済は成長してほしいけど、僕の会社自体はピークポイントからどう緩やかに下降していくのかを意識していて、仕事で得たお金をどう豊かに使っていくかをとても意識しています。例えば今作っている食堂は「儲かる見込みがあるからやる」という考え方ではなくて、「みんなが集える場所がこの街には必要だ」と思って取り組んでいます。「みんなが必要だと思う場所なら経済的にも持続できるはず。」という考え方で仕組みを作ろうとしています。

世の中は行動が成果に直結するほど単純ではない

色々と活動している地域おこしの活動で「本当に地域がよくなるのか?」という問いの答えは、今わかることではありませんが、「何もしなかったら何も変わらない。」この部分は今わかっていること。では何をするべきかを考えると「やった方が良いと思ったことに時間やお金を費やす」ことしかできません。

実績がないからやらない、前例がないからやらない、成果が出るか分からないからやらない。
パッと見てこの意見は正しいように見えるけど、未来について保証できる人は世の中には存在しません。やってみてダメならやり方を変えていくことでしか状況は変わりません。だから失敗は成功までの過程。5年前に購入した古民家は先月解体してしまったけど、あの食品加工のプロジェクトは失敗ではなくて、学ぶこともたくさんあったしそのおかげで色々な繋がりも生まれて新しいプロジェクトに繋がっています。

努力は必ず報われてほしいけど、実際にそんなに甘くはありません。僕自身、先輩たちと一緒にやっていた飲食店では毎日20時間くらい働いていました。それでも自分の給与まで利益は回って来ずに関わる方達にも大変な迷惑をかけました。その経験から「良いことと思っていても結果が出なかったり迷惑をかけてしまうなら辞めた方がいい。」と結果を重視するようになりました。

会社としては、11期に入りいよいよ変化の一年になりそうです。安心して働き続けられるような組織づくりを目指して、今年は食堂&民泊プロジェクトをなんとか形にしていきたいと思います。久しぶりに大きなことにチャレンジしているのでヒリヒリしています。ふと不安が過ぎることがありますが、なんとか頑張ります。

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