都会の人と地域の人との協業の難しさ

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唐突ですが、うちの会社では「デザインを通じて世の中をもっとより良くしたい」をミッションとして、デザインの手段は決めないというスタンスで活動しています。
 
僕の仕事のメインは、グラフィックデザイン、ウェブデザイン、フォト、フードデザインと、あまり色々と制約をかけずに活動するようにしていますが、都会と田舎のメンバーで一つの活動をデザインすることは今回初めてです。
正直戸惑う部分がたくさんあって、一つ一つ考えながらじっくりと進めている感じです。
 
さて、今回のテーマ「都会の人と地域の人との協業の難しさ」についてですが、最近は地方創生関連で助成金も潤沢にあるからか、地方にフォーカスを当てたコンテンツがたくさん発表されています。僕たちは活動の経費を全て自己資金でまかなっているのですが、基本的に僕の考え方としてプライベートプロジェクトについて「助成金を前提として活動しない」という想いがあります。
 
基本的に助成金などの税金を使った活動は「みんなにとっていいこと」を考えなければいけません。でも僕たちが行なっている三重県の古民家再生プロジェクトは、僕たちがやりたいことをやるプロジェクトです。僕たちのプロジェクトがみんなのためになることは大切なことですが、まずは僕たち自身が楽しめないといけません。それがあって初めて周りの方達にいい影響を与えられたりするものだと考えています。
 
色々と進めていると、やっぱり人が関わることというか、協業をうまく取りまとめることはとても難しいと思うのですが、最近考えていて一つの答えに達したので、それを今日は書きたいと思います。
 

1. 都会と田舎のやりとりの違い

 
僕たちが普段仕事をしていると「メールみました」とか、割とレスポンスを求められることが多いですが、田舎では基本的にメールでやりとりすることがなくて、直接会うか電話でのコミュニケーションになります。僕は一つのことをじっくりと考えている時に電話が掛かってきたりすると作業が止まってしまうので、電話の音やバイブレーションを切っています。
電話は人の時間に割り込む感覚があって、自分も嫌なので極力しないようにしています。その部分では常に電話での記録も残らないやりとりに少し戸惑いました。今は仕方ないので対応するようにしています。
 

2. お金のこと

 
田舎の人と協業する場合、もちろん資本をどうするのかが一番肝になります。僕たちの場合、当初LLP(事業組合)を立ち上げる予定をしていました。僕が手元に用意したお金は土地の購入金額を含めて3,000,000円でした。田舎の物件なのでこの金額で食品加工を行い、飲食店をセルフビルドで立ち上げることができます。
最初から全て自己資金で賄おうと思っていましたが、パートナーから自分も出資したいと申し出があって、1,500,000円出すと言われました。色々と話していると他の場所で自分が店を作ると言っていたようで、自分もお金を出さないと都合が悪いと思っていたみたいでした。ただ一時金で用意できないから分割10年で払うから、僕が用意した3,000,000円は自分も管理させてほしい(通帳を持たせてほしい)と言われて、そこははっきり断りました。
 
同じ権限がほしいなら今すぐここにお金を持ってきてほしいと伝えました。お金を出すと宣言したら同等の権限がほしいというのは無理な話で、そこは丁寧に何度も説明しました。僕は「変な駆け引きはしたくない。藤田さんと最初に会った時に食べた玄米棒が本当に美味しいと思ったから、これを郷土料理にできるくらいにしたいと思っている」と伝えました。
 
交渉をする場合、プロジェクトの根幹になるのはやっぱりお金です。最終的な主導権を持っているかどうかはとても重要で、プロジェクトが最悪途中で頓挫しても、僕一人でリスタートできるくらいの気持ちで自己資金を投入しています。それは藤田さんよりも強い権限を発動させたいわけではなくて、限界集落に入り色々やらせてもらっているのに、中途半端に投げ出すことは無責任だと思っているからです。だからどんな形でも続けていけるように、仕組みを考えました。不動産の物件を会社名義にしているのも、自分に何かあった時に不動産で揉めるといけないからです。
 
お金の話はとても難しい問題です。とはいえ、リスクと権限は一体でとてもシンプルです。
 
協業でリスクヘッジとか考えていても、大抵うまくいってもいかなくても揉めることが多いです。何かをやるなら、自分で覚悟を決めないと簡単にはできません。
田舎で古民家を安く買っても維持するのにすごいお金がかかります。先日屋根を直して台所を直して滅菌器を導入しただけで、約500,000円かかりました。移動費も1日10,000円弱かかります。毎週行くとそれだけですごいコストです。実際そういう部分がストレスになることもあります。そこをクリアしていかないといけないのが結構大変です。
 

3. 世代の違いのこと

 
僕のパートナーは74歳。自分の父親よりも年上です。普段はパソコンもテレビも使わない仙人のような人です。だから持っている情報は全然違います。当然色々な意見の相違があるのでぶつかります。最初は、なんとか言うことを聞いてもらいたいと思ったことがあったのですが、孫の年代の人に色々と指図をされるのは上の世代からするといい気分がしません。僕がお金を全て出しているとしても、ここは感情の部分なので仕方がありません。
 
そこで考えました。今までノウハウを全て出し切ってもらって、この地域での食品加工の流れを作る10年にしようと。だから地域の人で加工などが回って行くような仕組みを作るために裏方に回ろうと。ある意味パートナーの藤田さんは見た目も仙人みたいでキャラクターが立っているので、藤田さんをもっと前面に押し出してサポートしてみようと思いました。そう考えると色々とうまく回るようになり始めました。
 
正直僕のなかで、リスクを負っているんだからきちんとしてほしいと思う部分が強かったんだと思います。でもそれよりもプロジェクトが少しでも前に進むことを考えるのが自分の仕事だと途中で気がつきました。限りあるリソースをどうやって有効活用するのかをもっとシビアに考える必要があるなと。少ない人数でやっているのにギスギスしたらダメだと。だから僕が変わろうと思いました。
 

4. 自分が変わらないと、相手も変わらない

 
目的がはっきりしているなら、一時的に落ち込んだ状況も悪いことではなくて、ずっと120%の状態で行くことなんてありえません。だからあまりうまくいっていないことを人のせいにするのではなく、自分自身の課題にしていけないと、物事はうまくいかない気がしています。
 
我々はいつも問題を直視せず、相手に矛先を向けがちです。正論は時には鋭利な刃物のような凶器になります。場所が変われば正解が変わり、関わる人が変われば正義が変わります。そう考えると自分の正論なんて本当に役に立つのかと考え込むことがあります。だからあまり物事を決めつけずにその時に気持ちが動いた方向に向かっていけばいいのかなと思っています。
そんな柔軟な心で色々な課題にチャレンジしていけたらいいかなと思います。
 
これから暖かくなるので、本格的に古民家の片付けも始めます。
そのためにもっと早くいろんなプロジェクトを動かさないといけないなと思います。大変ですが、頑張ります。

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