僕らの役割は、普通をもうちょっとだけ「よくする」ことなのかもしれない
デザイン事務所を始める前は、食品メーカーで働いていたので、昼食時に新商品の試食をやっていたり、アンケートに答えたりそういうことがちょこちょこありました。たくさんの人が使うものをどうやって美味しくするかはとても難しくて、当たり前だけど人によって美味しいなんて変わるから、ひょっとしたら答えのない課題なのかもしれないとずっと思っていました。
それでも売れる商品があったり売れていたけど売れなくなる商品もあって、そういうのはたぶん時代に寄り添って色々な部分を少しずつマイナーチェンジを重ねているんだと思います。答えのないベストを目指すのではなくて、時代やライフスタイルにフィットするベターを目指すことが本当は大切なんだと、最近は思うようになりました。
前はベストじゃなくてベターを目指すことは妥協だと思っていたけど、折衷案からほんの少しだけ先に進む「ベターを探す」ことは難しい課題。でも僕は食品メーカーで働いていたから、そういう仕事が好きなのかもしれません。
前にリンゴ畑の真ん中でインスタントコーヒーを淹れてもらったことがありました。肉体労働で大変な農業でお湯を注ぐだけでほっと一息つけるインスタントコーヒー。コンビニで200円出せば買えるチョコレート。そんなベターで美味しい商品を販売するメーカーさんの企業努力って、僕たちにはわからないくらいの苦労と努力の結果なんだろうと思います。
昨日、レシピの撮影の仕事が終わった後、撮影に使ったお料理をみんなで試食していた時に、こんな日常に溶け込んだ商品を使ってレシピを提案したり、デザインをやらせてもらえて本当にありがたいなぁと思いました。日常に溶け込んだ商品だからこそ改善が難しいけど、ベストを目指すのではなくて時代にフィットするベターを探せばいいと思った時に、やるべき方向性が見えやすくなった気がしました。
奇抜さや新しさばかりを提案するのではなくて、今までにあった情報をタイミングよくアウトプットするのもとても大事で、僕たちの仕事はその時の普通をほんの少しだけよくすることなんだと思います。そのためには普通を知ること。普通を知るには「いいこと」と「そうでないこと」を知らないと理解することはできない。そう考えていくと、実は普通って一番難しいし、「それ普通じゃん」と言われることは、意外に褒め言葉なのかもしれません。
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