田舎での土地売買で気をつけること

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今回僕の会社で行なっている古民家プロジェクトでは、とりあえずは一緒に活動している現地の自然農をやっている藤田さんが前から作っている、玄米棒というお菓子をもっとたくさんの人に食べて欲しいと思って、餅の加工場を作っています。
その辺りは今月中に保健所への届け出が終わると思いますが、今回はまず土地売買についてテーマを絞って書きたいと思います。
 
そんなに問題ではありませんが、いま実際に起こっていることですが、知らない村の人が僕が購入した土地の所有権を主張してきています。井戸周りには俺の土地があると。田舎ではよく聞く話で、昔は登記の申請なども雑でお金の流れと権利の流れが合っていないことがよくあったそうで、その名残でいろいろ複雑になっていることがあります。僕たちの土地についてもどうなっていたかまとめます。
 

取引前に実際にあった課題

  1. 建物が建っている土地を確認してもらうと、大正時代くらいに土地が分割されていて名義人が3人いた。
  2. 建物の登記が間違っていて、実際の土地に建物が建っていないことになっていた。
  3. 売買する土地の中に田が含まれていたため、農地法の制限を受けた。

 

1.複数の名義人がいた件

最初に土地の売買の話が出た時に、一緒に仕事をしている藤田さんが「土地の売買なんて自分でできるぞ」と言って、しきりにお金をかける必要がないと言っていました。でもやっぱり餅は餅屋でやるべきだと思っていたので、大家さんも土地家屋調査士・行政書士の先生を連れてきて話を進めてくれたので、その先生に委ねることにしました。先生は地域のことももちろん詳しくてとても親切に対応してくださいました。色々と話を進めて思ったのは、土地のやりとりはその地域の専門家に任せるのが一番だと思いました。よそから先生を連れてきたりしても、その地域のことに詳しくないと対応するのは難しいのかなと感じました。
 
複数の名義人の件は、所有していた時期が大正時代の人で当然その人たちはお亡くなりになっていました。ただ、3名の法定相続人はまだ生きていることがわかり、その人たちはその土地のことを何も知らないという状態でした。行政書士の先生が確認を取ってくださって、所有権は特に主張しない回答でした。
要するにもともとよくわからないので勝手にどうぞということでした。
僕からするとありがたい話ですが、ただ色々と後から主張されても困るので、対策だけをしておかないといけない状態でした。そこで問題になるのが次の登記間違いの件です。
 

2.建物の登記の住所が間違っていた件

民法には時効というものがあって、土地の取得については「取得時効」というものがあります。民法162条を簡単にまとめると、

  • 所有の意思がある
  • 公然と平穏に占有している
  • 他人のものを占有している
  • 一定期間占有している(10年、20年)
  • 占有開始時に善意、無過失である

他人の土地でも一定期間占有すると占有している人が所有しますよというのが「取得時効」です。詳しくは下記のURLにまとまっていますので、参考にしてみてください。
 
https://www.minpou-matome.com/民法総則/時効/取得時効の要件-効果/
 
今回問題になったのは、建物の登記が昭和30年くらいから間違っていたこと。つまり、その土地には何も建っていないことになっていたことでした。
この場合、万が一法定相続人が所有権を主張したときに、上記のような取得時効を主張できないことになってしまいます。そこで先生が建物登記を改めて遡って行ったほうがいいと提案がありました。
 
大家さんがまず登記の訂正を行い、昔から建物が建っていた事実を登記上も行い、それから20年以上たっているので取得時効を成立させて、高杉アトリエに売買するという流れにしました。
 
実際にそのような手続きを行なって土地を取得して一安心と思っていたら、今度は知らない村の人が土地の所有権をなぜだか主張してきています。今回は上記のような流れで土地の売買を行なっていますので、実際に知らない村の人がそう言ってきても、土地家屋調査なども含めて調査と手続きを全て踏んでいるので大丈夫です。
 
田舎では土地売買の手続きが昔から煩雑で、なんでも言ったもの勝ちなところもあったみたいです。
実際にそういうトラブルで金銭の授受があった話を聞いているので、おそらく何かを主張すればお金が手に入ると思ったのかもしれません。最悪そういうことが起きると嫌だなぁと思って手続きをきちんとしたいと思っていたのに、意外に早く「やっててよかった事案」が発生して、やはりどんな形でもこちらはクリーンな状態にしておくことが大切だなと感じました。
 

3.農地法の制限を受けた件

僕も正直全然知らなかったのですが、土地には地目と言って田とか宅地とか色々分類されていて、農地の売買は農地法で厳しく制限されていて、簡単に売買することができません。
農地は「国民に対する食料の安定供給の確保」が目的で、そのため税金なども優遇されています。売買や違う目的に転用する場合、その地域ごとに設置されている農業委員会の許可が必要になります。今回僕は農家ではないので、農家でない法人が田を手に入れることは正当な理由がないと農業委員会から許可がおりません。
 
農地法第5条に「農地を農地以外にする場合で権利の設定や移転をともなう場合…」という項目があり、宅地に隣接する田などの場合、駐車場にするからという理由で売買することはできそうでしたらので、そのような形で所有権の移転の手続きを行なってもらいました。
 
脱サラして農家になると言っても、実際には農業の実績がない人が農地を買うことは不可能で、とりあえず借りるしかないのが実情です。この辺りは僕も全然知りませんでした。雑誌とかを見るとそういう一番大切な部分が書いてないので、新規就農者にもそういうことも伝えないといけないのではないのかなぁと思いました。
 

まとめ

学生時代ビジネスに関する法規の勉強して資格を取っていたことや、サラリーマン時代に契約書を触る機会が多かったことで、今回は何を抑えたらいいのかがだいたいイメージできました。知らない土地で何かを起こす場合、様々なことを予測して事前にトラブルを回避することはとても大切です。それでもトラブルは起きるものだと思いますが、実際に手続きなどで時間がかかることが一番無駄だと思いますので、権利などに関してはプロの先生にお願いすることが大切だなと思います。
 
なんでも経費削減と自分で手続きをしようと思っても、結局時間がかかりすぎたり、想定外のことに対処できなかったら全て無駄になってしまうので、きちんとしたコストを予算に組み込むことが大切だと思いました。今回は大家さんと色々と折半したりしていますが、土地や建物の登記や農地転用などの処理を含めて大体30万〜40万円くらいかかりました。結構かかるものだなぁと思いつつ、先生にやってもらって本当によかったなぁと感じました。
 
次回は保健所の手続きなどについて書こうと思います。

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